開催理由
われわれの地元諫早市は2022年に西九州新幹線長崎ルート開業に始まり、外環状線開通、県南地区3振興局を集約する県南振興局計画、大手企業の新工場計画など都市計画が大きく進められています。その中でも2026年に開業を予定している九州最大級ショッピングモール計画に対する関心が高まっています。この計画による変化は近隣の商業施設のみならず県内全体に大きな影響を与え、好機となり恩恵を受ける企業もあれば、逆に脅威となり事業縮小などを強いられる可能性もあります。街全体の人の流れやライフスタイルが変わることで予想外の変化が起こりうることを考慮すると事業の好転にも悪化にもつながる可能性があるため、どのような業種でも学ぶべき内容であると考えました。
目的
- 開発事業の正確な情報を把握し、将来の変化を予測する。
- 中長期的な経営戦略を立て、新規事業の可能性を見出すことや既存事業のブラッシュアップを行うことで、各事業所の発展に繋げる。
内容 視察研修
- 視察先
佐賀県佐賀市 - 選定理由
2006年に大型ショッピングモールが開業していること。大型ショッピングモール近隣に商店街があること。行政との関りから大型ショッピングモールが開業したこと。以上がわれわれの地元諫早の状況と類似しているため。 - 内容
大型ショッピングモール(ゆめタウン佐賀)、唐人町商店街、佐賀市役所の3か所を視察しま
した。ゆめタウン佐賀は参入者側、唐人町商店街は地元事業者側、佐賀市役所は行政側として
立場の違う3か所から開業前と開業後の変化について生の声を聞くこと、また、実際の変化を
見ることで諫早市の将来の変化について予測することができました。
- 大型ショッピングモール(ゆめタウン佐賀)
- 40万人を商圏として開業した。(佐賀市人口は約23万人)
- 来客数月平均80万人は佐賀県の人口とほぼ同じ。年間350億円の売り上げがある。
- 店舗数210のうち10~15%が地元企業関連。
- 食材などは地元から調達するなど地元との関連を大切にしている。
- ドミナント戦略の視点から開業を決めた。
※ドミナント戦略:地域を特定し、その特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大し、他小売業の優位に立つことを狙う戦略。 - ゆめタウン佐賀を中心とした商業地域が出来てくる。周囲にガソリンスタンド、飲食店
コンビニなど。
- ゆめタウン佐賀出店者の声
- テナント料は相場よりも少し高い一方で、下記のようなメリットが大きい。
駐車場が潤沢にあり、自前で準備する必要がない
空調などのメンテナンスはゆめタウン佐賀側が持つため、維持管理費などを別途積立無
くてよい。
広告などはゆめタウン佐賀側がしてくれるため、HPなどを持たなくてよい
働くことだけに集中できる
- テナント料は相場よりも少し高い一方で、下記のようなメリットが大きい。
- 佐賀市唐人町商店街
- 開業後、約90%が廃業した。
- 大規模開発への対応として、再開発組合を発足したが1年半で破産した。
- 物販の店がなくなり、飲み屋の街に変化した。
- 専門店は商店街の中に残っている。
- 自治体の補助により、若い人が少しずつ入ってきている。
- これからは一過性ではない、持続可能なイベントを実施していく必要がある。
- 佐賀市役所
- 兵庫北地区(ゆめタウン佐賀の立地する地区)は土地区画整理事業で、大半が田んぼだ
った土地を整備し、土地を整理して地価を上げることを目的とした。 - 住居地域をはじめ商業施設も建てられる用途地域とすることとして、住環境を整えて人
口を上げることも目的とした。結果、地域人口619人が5,677人に増加。 - 郊外型大型ショッピングモール(ゆめタウン佐賀)ができたことで中心市街地の空洞化
につながった。 - 中心市街地活性化基本企画を策定し、中央大道りの沿道がにぎあうように補助事業を行
っている。
- 兵庫北地区(ゆめタウン佐賀の立地する地区)は土地区画整理事業で、大半が田んぼだ
- 視察感想
- 大型ショッピングモールの開業前と後では商店街の姿はまるで違い、対応していなかっ
た結果を実際に見たことにより、街の変化を予測することが一層大切だと気づかされま
した。 - 行政の補助により、新たに商店街に参入した店舗もあったが、再生したとは言い難く、
専門店などが生き残っているという言い方が最適に感じた。 - ゆめタウン佐賀側が言うように周辺地域が活発に開発され、街の中心がゆめタウン佐賀
中心に移動したかのように感じた。 - 実際に佐賀県全体、佐賀市全体での人口は減少しているが、ゆめタウン佐賀周辺地域は
今もなお増加している。 - 開業したゆめタウン佐賀、そして地域の住民の大半は満足しているようだが、地元事業
者にとっては死活問題となる。
- 大型ショッピングモールの開業前と後では商店街の姿はまるで違い、対応していなかっ
内容 講演会・グループディスカッション
- 講師
近 勝彦 様(大阪公立大学大学院都市経営研究科都市経営専攻 教授) - 選定理由
「都市における中小企業の連携化戦略」など50以上の論文や、「集客の方程式」など16冊の書籍に携わられており、経営・経済・IT・地方の商店街再生など幅広い分野で活躍されていることから。 - 内容
視察研修では、大型ショッピングモールが開業することで街に大きな変化があり、地元企業は多くの企業が廃業したことや独自の特徴がある企業は生き残ることができていることを知りました。生き残るためにはみんなで手を取り合わなければならない。そのような結果から街の変化について専門家よりご講演いただいた上でビジネスチャンスと異業種との連携についてグループディスカッションすることで視野を広げ、各企業が中長期的な経営戦略を立てる際の参考になるよう開催しました。
- 講演
視察研修時には大型ショッピングモールが開業することは商店街に対して素直にネガティブな印象を強く受けたが、講演前半で捉え方が変化しました。諫早市は長崎、大村、島原の結節点として恵まれた環境にあり、戦うのではなく、いかに捕まえ共存関係とできるのかが重要。また、商店街と大型ショッピングモールが近くにある特異な諫早はピンチをチャンスに変えることができると、今までとは異なる見解を示していただきました。
大型ショッピングモールがくることで地元の人流の変化とインバウンドなどにより客層が変わることは他の地域(小樽、倉敷、浜田)の事例からも明らかで、大型ショッピングモールが来ることにより商圏が広がることから、客層の変化に合わせて経営を柔軟に変えていくことができた企業がしっかり生き残れている。
近教授が無作為に取られた3000名アンケートでは商店街を推す理由として「地域と共存」「地元や地域のことを考えている」「地域に貢献している」などが挙げられていることから地元企業が大切にしないといけないことを再認識しました。ランチェスターの法則から大手は相手のニッチ戦略や差別化戦略を無効にするミート戦略をとってくるため、各企業は大手にできない差異を生み出すことが大切だと学びました。そのため「VRIO分析」により競合他社との優位性を分析し戦略を立てる視点は大きな学びとなりました。
商店街および商店の対抗戦略の基礎として「心理的愛着と心理的距離」「来店=魅力度/心理的距離」。大型ショッピングモールがくることによる客層の変化に備えて、諫早の街の歴史を理解するなど地域に近い存在でありながら、企業の強みや独自性を磨いて魅力を高めることが重要だと感じました。 - グループディスカッション
今回の講演で客層の奪い合いではなく商圏を大きくするという視点で捉えたことで、活発な意見に繋がりました。モノを売るという視点からコトを売っていく視点での意見が多くサービスの質を上げていくことが大切であること、諫早らしさをアイデンティティを作ることで確立してほしいとの意見が印象的でした。AIで諫早の食がヒットしないことは個性がないと捉えず、これから創り上げていくことができるチャンスととらえることが重要と学びました。大型ショッピングモールがくることにより交流人口増となることは大きなチャンスであり自らが変化する視点を持ちたいと思いました。
地域を大切にしながら常に企業としての地力をつけていきたいと感じました。
総括
地元に愛され、地元に貢献できる企業になる!
まさに私たちYEGの活動が自企業にとっての発展に繋がるということを強く感じることのできた
事業でした。
また、この事業をきっかけに親会、行政(諫早市)と「大型商業施設との共存・協調の関係の構築」をテーマに意見交換会を実施しました。その結果、諫早市が設置する地元商業者と大型商業施設との連携体制作り協議会への参加も決定しました。
事業を開催することがゴールではなく、今後も地元事業者としてだけでなく、諫早YEG全体としても関わり続け、自企業の為、地域の為に活動していきます。
私たちの笑顔が地域社会の笑顔に繋がると信じています。各企業と地域社会の持続可能な明るい未
来のために未来を創造していきましょう!
令和6年度 諫早商工会議所青年部スローガン
「NO SMILE NO LIFE~共に未来を創造しよう~」
単会情報
- 単会名
- 諫早YEG
- 主催者名
- 諫早商工会議所青年部
- 事業ジャンル
- 自己研鑽
- 事業名称
- 大型ショッピングモールとこれからの諫早
- 開催日時
- 令和6年7月9日、令和6年10月7日
- 開催場所
佐賀県佐賀市、諫早商工会館3階大ホール
- 単会会員数
(事業開催時) - 87人
- 事業参加会員数
- 62人
- 参加率
- 71%